にっこり笑ってうなずくと、先輩もほほえんで手をふる。

 私は敬礼を返して、刑務所棟のほうにもどる先輩を見送った。


 …さて、と。




「すぅ…はぁ…」




 両腕を開いて深呼吸をすると、体のうごきに合わせてポニーテールがゆれる。

 おなかの底に力を入れて、受刑者に負けない気がまえを作ると、正面玄関の扉を開け放った。




「お。自動扉?…じゃ、ねぇみたいだな」




 開いた扉の先に立っていたのは、警官2人をうしろに連れた、燃えるような赤髪の男。

 私を見下ろしてへらりと口角を上げた男は、オレンジ色のつり目を三日月形に閉じて「よ」と笑った。




「ひさしぶり」


「私語をつつしみなさい。あなたと私は初対面です」


「ん?…あぁ、人ちがいだったな。わりぃわりぃ」


「ご苦労さまです。あとは私が引き継ぎます」