「さわらないで、浮気者」


「浮気…?」


「なにをきょとんとしてるの、ラブレターもらったくせに、他の女子を口説いて回ったくせに!逃げる気はないって言ったのに、脱獄計画まで!」


「落ちつけって、景依」


「落ちつけるわけないじゃん!何回私をだませば気が済むの、からかうにしたって度が過ぎてる、私は本気で…!」




 雷牙のことが好きなのに。

 憎たらしい顔を映した目がうるっとしてきて、おかしいな、と思いながら顔をそらした。

 怒って問い詰めるつもりだったのに、不満しかぶつけられないし、泣きそうになってる。




「景依」


「なに、言いわけなら気かな…」




 いから、と言うまえに口をふさがれて、目を見開いた。

 どんっと雷牙の胸を押し返すと、一瞬だけ顔が離れたけど、手首を掴んでまたキスされる。

 うしろの扉に背中があたって、「んー!」と抵抗すれば、後頭部に手が回された。