藤枝(ふじえだ)景依(けい)視点―


 けっきょく、いい案はまるで思いつかなかった。

 苦肉の策として、成績を落として、2年首席の座を放棄することでなんとか許してもらおうと考えている。


 鳩野(はとの)さんが先に先生へと報告しに行くまえに、とはやめに部屋を出ようとしていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。

 私は目のまえにあった玄関の扉を開けて、「はい」と応対する。




「おはようございます」


「は、鳩野さん…!?お、おはよう」


藤枝(ふじえだ)先輩におうかがいしたいことがあります。藤枝先輩は108番に、」


「ちょっ、ちょっと待って!」




 とっさに鳩野さんの口をふさいで、あたりを見たあと、私は彼女を玄関に引き入れた。

 危ない危ない…。




「えっと、さえぎってごめん。その件なんだけど、私、今学期成績を落として2年の首席にならないようにするから、見逃してもらえないかな」