扉を大きく開けて道を作ると、小柳先輩はぺこりと頭を下げてなかに入る。
「ルームメイトさんは、いま…?」
「自分にルームメイトはいません」
「そ、そうなんだ…」
目を丸くしてから、小柳先輩は両手の指先で口元を押さえて、すこしあとにぎゅっと握りこぶしを作った。
「あのっ、景依ちゃんのこと!内緒にしててあげて欲しい、です…!」
「…小柳先輩も知ってるんですね」
「う、うん…あの、景依ちゃんって男ぎらいで…」
「知ってます。藤枝先輩からも今日聞きました」
藤枝先輩の男ぎらいは有名だ。
というよりも、女子にはやさしい、ってはなしだけど。
小柳先輩はぱちぱちとまばたきすると、視線を右に左に泳がせたあとで、ぐっと身を乗り出してくる。