「そう。私の上官」


〈そうか…〉





 吐息まじりの声にドキッとして、胸を押さえた。

 これが大人の色気。

 さすがお兄ちゃん。




〈つまり、禁断の恋を見ちゃったってことだな。見逃してあげられないのか?〉


「見逃せる。でも、刑務官としては報告義務がある」




 答えてから、禁断の恋か、と思い返してみる。

 あれはただ108番にたらしこまれてたんじゃなくて、想い合ってのキスだったの?




〈うーん…でも、真波が尊敬するような、立派なひとなんだろう?立場を考えてもがまんできないくらい、その、あ、愛し合ってるなら…〉




 もごもご言いよどむお兄ちゃんもかわいい。




〈俺は見逃してあげたいけどなぁ…やっぱり堅い職業だからダメなのか?〉


「ダメじゃない、見逃す」