鳩野(はとの)真波(まなみ)視点―




「もしもし、お兄ちゃん?」




 たまたまルームメイトがいなくて、1人で使っている2人部屋。

 自分は二段ベッドの下の段に腰かけて、スマホから聞こえる声に耳を傾けた。




〈もしもし。こんな時間に電話したい、なんてめずらしいな〉




 笑いまじりの低い声。

 胸がキュンとして、うっとり、目を細める。




「おそい時間にごめんなさい。相談したいことがあって」


〈かわいい妹からの電話ならいつでも受けるよ。どうしたんだ?〉




 また妹あつかいされた…。

 じれったいけど、お兄ちゃんにかわいがってもらえるならそれでもいい。




「尊敬してる先輩が、受刑者にたらしこまれてたんだけど、見逃して欲しいって言われたの。どうしたらいいと思う?」


〈えぇ、と…たらしこまれてたって、具体的には?〉