「さらには、“将来は看守さんかな”とも言ったんです。その瞬間、自分の将来は決まりました」
「えっ、近所に住んでる男に言われただけで?」
「知りませんか、藤枝先輩。恋イズ盲目です。お兄ちゃんが“お兄ちゃんって呼ばれるのうれしい”と言えば、自分は一生お兄ちゃんをお兄ちゃんと呼ぶのです」
「そ、そうなんだ…」
頬がひきつった。
鳩野さんって変わった子だなぁ…。
「…ですから、自分は看守として一切の不正を見逃すわけにはいきません。もちろんお兄ちゃんは例外ですけど」
「うっ…」
たしかに刑務官として正しいおこないだから、反論ができない。
1人に傾倒しているようすなのは気になるけど。
私はなかばやけになって、雷牙のように口八丁で鳩野さんを丸めこみにかかった。



