私は目をつむって、鳩野さんを引き止める言葉を探す。

 退学になりたくない、雷牙(らいが)のそばにいたい、刑務官で居続けたい…。

 頭に浮かぶのは、自分勝手な感情論ばかり。




「…っ、見逃して」




 けっきょく、口に出せたのはその一言だけだった。




「はぁ…あんまり情けない姿、見せないでください。がっかりします」


「刑務官失格なのはわかってる、たったの数年がまんすればよかったんだって、」


「自分もはなしましょうか、監獄学園に入った理由」


「え…?」




 きょとんとして鳩野さんを見上げると、彼女は目を細めて宙を見つめる。

 そして、語り出した。




「自分には、運命のひとがいるんです。家が近所で、物心ついたときにはすでに“お兄ちゃん”と出会いを果たしていました」


「う、うん…?」