藤枝(ふじえだ)景依(けい)視点―


 日本では、再審請求が通ることはほとんどなく、“開かずの扉”なんて言われるほど、一度判決が決まった裁判の再審理をするのは困難なんだ。

 今回雷牙(らいが)は、“有罪判決を受けた者の利益となる、新たな証拠が発見されたとき”という条件に該当したとして、再審請求をした。


 その結果が、いま。




「証人は2023年12月27日から30日朝のあいだ、どんな状態にありましたか?」


「どこかの倉庫に監禁されていました。自白剤を盛られて、“赤城(あかぎ)会の者”と名乗る男たちに、乃沢(のざわ)学園のことについて聞かれました」




 私は裁判官の向かいの証言台に座って、きんちょうを手のなかにかくしながら、顔を上げて答える。

 主尋問を担当する弁護士は、うなずいて次の質問をした。




「では、12月29日の夕方から夜にかけて、その倉庫には証人の他にだれがいましたか?」


「被告人1人です」