俺はおそるおそる、テツの手首を掴んだ。

 …脈は、感じない。




『うそだろ…』




 しん、と静寂があたりを包んでいた。

 たったいま尽きた命を認めることができなくて、しばらくぼう然とする。


 “逃げろ”。

 それが最後の言葉だった。

 でも…。


 …逃げねぇよ。

 逃げられるわけ、ねぇだろ…。

 こんなことになって…。



 そのあと、ようやく到着した救急車に乗ってた人間が、この現場を見て警察に通報した。

 死体が大量に転がってる現場で、1人、血まみれになって生きてる男。

 そんなやつが、逮捕されないわけもなく。


 赤城会会長の孫っていう俺の素性も、“犯人”としての箔にはじゅうぶんだった。

 結果は、死刑…を少年法で格下げして、無期懲役。


 でも、相棒の罪をかぶるのは、わるい気分じゃなかった。