「…すっぽり記憶が抜けてるとこ、あるだろ?」


「!どうして雷牙がそれを知って…」


「そんときに会ってたからだよ。…思い出させてやる、年末の記憶」




 雷牙は私の頬から手を離して、パーカーのポケットに手を入れる。

 そこから取り出されたのは、におい袋のようで…甘いような、ありとあらゆる草を集めたような変なにおいに、頭がくらっとした。




「“赤城(あかぎ)会に下れ”。…12月27日から30日の記憶を思い出せ」




 カギをかけてしまった記憶が、ゆっくりと扉を開けて流れ出す。

 どれだけ思い出そうとしても思い出せなかった空白の期間が、いま、頭のなかによみがえった。