あぁ、まさか、あの男に気を許してるとは思わなかったが。
ピンク色の瞳にあいつを映してるときは、男ぎらいなんて気配はまるでない。
本当に惚れてんじゃねぇの?とくつくつ笑った。
「藤枝景依…」
ここに来たのはなんの因果か。
…いや、必然ってやつか。
法務大臣の息子サマがいるんだ、俺をひざまずかせてアピールしたいんだろう。
日本一のヤクザ、赤城会でさえも法のしもべだって。
俺なんかまだまだガキだし、火あそびくらいしかしてねぇのに。
いや、いまの肩書は大量殺人を犯した大罪人だったか?
「はぁ…」
あのことを思い返すと、あれから何度ついたかわからないため息がまた出る。
つかの間、楽しい気分を味わったが…。
俺は3畳もあれば上等ってほどせまい部屋のなかを見回して、沈む気分とは裏腹に口角を上げた。



