―108番・大門(だいもん)雷牙(らいが)視点―




「相変わらずだな」




 ちょうばつ房に追いやられたあと、黒いポニーテールをぴょこぴょこゆらして歩く、ちいさな女を思い返して笑う。

 くりっとしたあの丸い目でにらんだって、威圧感はないってのに。

 ハムスターにでもいかくされてる気分だ。




「…よけいなこと…」




 言うか?と考えて、それはないなと首をふる。

 あのようすだ。




財前(ざいぜん)先輩!』




 ピンク色の瞳が俺からそれた瞬間を思い返す。


 …まさか、あの男に気を許してるとは思わなかった。

 あいつのまえじゃ、男ぎらいなんて気配はまるでない。

 本当に惚れてんじゃねぇの?とくつくつ笑う。




『私語はつつしみなさい』




 ああやって気取ってる姿を見ると、からかってぼろを出させたくなるな。

 キャンキャン鳴いてるほうが似合ってるし。