「来たな」


「藤枝、到着しました!先生、いったいなにが…」


「2人とも、よく聞きなさい。Verbrechen(フェアブレッヒェン)の生徒多数が…」




 先生は一度言葉を区切ると、すぅ、と息を吸って重々しく告げた。




「――脱獄しました」


「なっ」


「…詳細な状況は」


「刑務作業中、1名が腹痛を訴え医務室に。しかしその後、彼は姿をくらませました。捜索にあたるなか、房へ移動させていた受刑者たちが一斉に逃亡」


「そんな、まさか陽動を…!?」




 一斉に、なんて事前に計画していないとできないうごきだ。

 そのきっかけを作った最初の脱走も、計画のうちだったんじゃ…。


 それにVerbrechen(フェアブレッヒェン)が力を合わせたってことは、リーダーがいるはずで…彼らのリーダーになりえる人物は…。

 どくどくと、心臓がいやな音を立てる。




「計画の首謀者は108番だと思われます。現在、Aクラスの生徒が脱獄者の捜索にあたっていて、先ほど警察にも協力を要請しました」