藤枝(ふじえだ)景依(けい)視点―


 財前(ざいぜん)先輩とあそびに行くというあの約束は、現実となることがなかった。

 なぜなら…。




「財前先輩とあそびに行く日、明日かぁ…」




 寮の部屋でごろごろしていた私は、ウゥーン、ウゥーン、ウゥーン、ととつぜん鳴り出した警報にびくっとする。

 同時に学園からスマホへも着信があって、一拍遅れてから、あわてて電話に出た。




「はいっ、藤枝(ふじえだ)です!」


〈非常事態が発生しました。至急学園、刑務所棟会議室まで来てください〉


「わかりましたっ」




 この声、担任の先生だ…。

 私は電話を切って、急いで制服に着替えてから寮を飛び出した。



 息を切らせて会議室に入ると、すでに制服姿の財前先輩が待っていた。

 そしてもう1人、きびしい顔をして立っているのが2年特進クラス担任の、辺春(へばる)元美(もとみ)先生。