どくどくと鼓動がはやくなって、あのときの熱がよみがえるようだった。

 雷牙…。




「あれ?どうしたの、藤枝?体調わるい?」


「っ、え!?い、いえっ!」




 声をかけられて顔を上げると、まがり角から林郷(りんごう)先輩が姿を現していた。

 段ボール箱を抱えている林郷先輩は、「あ」と声をもらしてじっと私を見つめる。

 …うん、糸目だからわからないけど、たぶん、私のことを見てる。




「…なんかあった?恋する乙女の顔してるよ」


「へっ!?」




 笑いながら言われて、バッとうつむきながら、自分の顔をぺたぺたさわった。

 恋する乙女の顔!?私が!?

 恋ってだれに…!


 そのとき、さっきまで考えていた人物の顔が頭に浮かぶ。


 …雷、牙に…!?

 いやいやいやいやっ、ありえない!!