顔を上げて、まえを向いている財前先輩の横顔を見る。
男になぐさめられるなんて気持ちわるいだけだけど、財前先輩はやっぱりちがう。
心が軽くなって、うれしくなる。
頬をゆるめて2階で一度足を止めると、財前先輩を送り出すために体の向きを変えた。
「では、また放課…」
「…おい、ひとが来たぞ…」
「…やべっ、かくせかくせ…」
「「…」」
あいさつをするとちゅうで、ひそひそとした声が上階から聞こえてくる。
財前先輩と一緒に階段の上を見たあと、私たちは顔を見合わせてうなずいた。
3年生の教室に背を向けて階段を上がっていく財前先輩に続いて、私も階段を上がる。
「そこでなにをしている」
「っ、か、会長…!」
「いえっ、なにも…!」
「両腕を開いて静止しなさい」
「「ふ、副会長…」」



