「藤枝。俺の嫁になれ」


「!」




 あの財前が、藤枝にプロポーズ?

 声がもれそうになった口を片手でふさいで、扉から一歩離れる。




「かっ、考えさせてくださいっ!!」




 バンッと右の扉を開け放って、目をつむりながら階段へと走っていく藤枝をながめた。

 あの、まっかな顔…。


 自然と口角が上がる。

 見えた。

 一筋の道が。




「ははっ…」




 ちいさく笑い声をもらして、生徒会室のまえから離れる。


 藤枝(ふじえだ)景依(けい)

 彼女も気に入らない生徒だ。

 2年首席。たかが2年首席のくせに、この学園のルールで彼女は監獄学園の次席としてあつかわれる。


 次期生徒会長を業務に慣れさせるため、副会長に据えておく…なんて理由には乾いた笑いしか出ない。

 僕は後輩の“経験”のために、学園次席の名誉を手にすることもできなかったんだ。

 現時点で、僕の方が経験も知識も技能もあるって言うのに。