唇を隠して,それでも君に恋したい。


僕が心から想うのは



「ぼ」

「つまり,俺は」

「う,うん」



真っ直ぐな瞳に,揺らぐ。

思わずたじろいで,僕は続きを待った。



「俺は,伊織の1番じゃなくなって,妬いてる」

ーだから,怒ってるとかじゃ,ない



柱を背に小さくなっていく身体。

とうとう僕の膝の高さまで小さくなって,僕はようやく



「え?」



と反応する。

今のは,あれだ,つまり……

親友,的なことを言いたかったのであって。

僕が期待するようなあれでは,ないはずで。



「あっ……つぅ」



こんなに体温が上がる生き物なのか人間は。

そう思ってしまうほど,隠せない。

今なにか言われたら,僕は否定できない。

僕を見上げた敦がはっと息をのむ。

そして僕の手首を掴まえた。



「俺はスズや三太と違って,誰かを好きになったこともない。それに,こんな気持ちになったことも。だから正直分からないけど,伊織。俺は,多分……お前の事が好きだ」



見開いた瞳の横で,敦の告白が聞こえる。

僕は信じられない思いで,更に目蓋を持ち上げた。

手首に伝わる緊張と痛みが,現実を思わせる。

混乱のなか,渇いた喉から飛び出たのは



「僕の方が,好きに決まってる」



拒絶ともとれるような,挑発で。



「「え??」」



発した自身まで驚いて,僕は敦と目をあわせて瞬いた。

そうだ,意味が分からない。

僕の方がずっと,敦が好きだ。

敦がなんと言おうと,僕は信じない。