唇を隠して,それでも君に恋したい。



「おり……伊織,伊織」

「ん……」

「もうすぐつくぞ」

「ふ」



んーーと伸びをする。

気付けば僕は,飛行機の中だった。

回りを見渡すと,同じ様に起こされている同級生がちらほらと見える。



「ありがとう」



僕を起こしたのは,隣に座る敦だ。

寝起き一発目に見える景色が敦の顔なんて,控えめにいって最高。

口元を拭うと少しかぴついていて,見られてないかなと今度は最高な気分と反対に慌てた。

初めての飛行機。

景色や会話を楽しもうと思っていたのに,雲が見えた辺りでもうだめだった。

薬でも盛られたかのように急激な眠気に襲われて,僕は僕自身が気付かないままいつの間にか眠っていたらしい。



「よっっしゃー!!! ついた! 何して遊ぼうかな~ー」

「遊べないよ,三太。最初はバスガイドさんの話を聞きながら資料館,その後……」

「分かってるよ! 分かってるけど!」



空港に響き渡る三太を見て,クラスメートがくすくすと笑う。

僕も,仕方ないなと苦笑した。

バスはもう到着していて,とくに周辺を見ることも出来ないまま乗り込む。

座席の指定はなく,僕はきょろきょろと周りを見た。

スズは引き続き三太の隣に行くだろうし……

まず右に敦を見つけ,左には和寧を見つける。

右に行きたい,右にいきたい,けど。

ぱちりと,一瞬,敦と目があったような気がした。