唇を隠して,それでも君に恋したい。



「こんなんじゃ見えないだろ。俺の顔覚えらんないとまた分かんなくなるぞ」



余計なお世話だ。

だけど,なんの仕切りもないままみた敦の瞳がまんまると純粋な形をしていて,僕は唸る。

僕はじたばたするのをやめながらも,敦の手からは手を外さなかった。



「お前,キレーな顔してんのな」



ふはっと笑われて,屈辱的なはずなのに。

友好的な空気を感じると,僕はなにも言えない。



「もういいだろ」



ふいと顔を背ける。

敦は自分の席に座り直すと



「うん」



と頷いた。

そこは素直なのかよ,と,こっちのペースばかりが乱される。



「なあ,伊織って呼んでもいいか?」



僕は君の名字すら知らなかったのに。

敦はなんの迷いもなく言いはなった。



「好きにすれば」



僕はやっぱり,真っ直ぐには返せなくて。

だけど気を悪くすることもなく,僕を友人にしてくれて。

皆の仲間に入れて,友達にしてくれて。

僕は……

最初にきっかけをくれた君を,君だけを特別に想って,恋に変わるのに。

たいした時間はかからなかった。

そうだ。

生まれたばかりのひよこが,母親を錯覚するように。

初めて隔たりなく映った君に,僕は……

ずっとずっと恋を