唇を隠して,それでも君に恋したい。




「そのまま。さっきと反対に内側から外に。真っ直ぐ」

「り!」



僕はこの打ち方がすごく苦手だ。

外側に打てば,外側に行くに決まってる。

だけど思いの外真っ直ぐ飛んでいき,僕はなんと3回もスズとラリーをを続けられた。

そう言えば三太は……

あんなに騒いでいたのにと視線を移すと,三太は隣の敦&隣のクラスの人のペアに混ぜて貰い,3人で打ち合っている。

敦が誘ったんだろうな。

スズ程面倒見が言い訳でもないけれど,他人をほっとけないやつだから。

リューもそれを分かってたのかな。




『3分休憩ーー。飛ばしたやつは球ひろっとけよー~』



いつの間に。

終わるのもあともう少しか。



「ありがと,リュー。もう大丈夫。ちょっとだけ楽しくなってきたかも」

「…おー」



ぱたぱたと,敦や三太の座る木陰へ走る。

すると他の2人もいつものように集まってきた。



「おー来た。ひどいじゃんかよーリュー。離れるなら一言くらい言えよ!」

「別に。どうせ敦が何とかしただろ」

「そうだけどよ」



口を膨らませ,思い出したかのように三太が言う。

リューは短く答え,あとは聞こえていないかのようにごくごくと水筒に口をつけた。