唇を隠して,それでも君に恋したい。

はいじゃー修学旅行の班決め,とっととやってくぞー」

「なにその素敵な響き。今日のロングそんななの?」



もう寝ます,の体勢からすっとんきょうな声をあげてがばりと起き出したのは,もちろん和寧。

僕が頬杖をついたまま目線を後ろにやれば,流石の先生も呆れたように声を出す。



「ずっと言ってるし今朝も言っただろ……お前はいったい何を聞いているんだ」

「まーまー。で,この学校はどこ行くん? 前の学校は長崎の予定やったんやけど。奈良京都? 大阪? それとも海外?」

「沖,縄,だ!」



当然クラスメートは何度も聞かされて知っている。

話を聞いていなかったことを正面から突きつけられ,先生はこめかみに青筋を光らせながら答えた。

そんなことには気もとめず,おぉーっと和寧が目を光らせる。

先生は和寧を放っておくことにしたようだ。

話を進めるために,注意点を説明し始めた。

それすらも聞いていない和寧は,また口を開く。



「あそこなー。うまいステーキがあんねん。いけるやろか~ー」

「和寧,行ったことあるの?」



僕は振り返って小声で訪ねた。

僕はそもそも,あまり遠出をした経験がない。

偽の住所を与えられ,ひっそりと施設で育てられた僕には,沖縄と言われてもあまりピンと来ない,海外と変わらない場所だ。