唇を隠して,それでも君に恋したい。



「和……」



僕の唇が,僕を待つ目の前の男の名を紡ぐ。

その瞬間,和寧ははっとしたように僕の左手に力を込めた。



「待って。今なにか」



後ろ目に言いかけた和寧。

今度は僕の耳にもはっきりと,さかりとした音が聞こえる。



「え」

「誰か近くに来る……?」



何となく緊張して,僕たちは2人して息を止めた。

その静寂を打ち破るように,聞き慣れた男の声がする。



『……伊織? 誰かとそこにいるのか?』



ビクリと肩が跳ねた。



「あ,敦?!?」



思わず声がひっくり返る。

己が今和寧にしようとしてことを考えると,和寧から飛び退いてしまう勢いだった。

どうして敦が体育館裏になんて……

僕は頭上に小窓を見つけて,涙を拭いながらそばのマットによじ登って外を覗く。