「僕たち,頑張ったよな伊織。僕の恋も,お前の恋も……なんも悪くないよ。受け入れて,"普通"に溶け込んで,隠して,怯えながら日常を手にいれて。凄いよな。僕たちは間違ってない……そうだろ?」
いつの間にか声を揺らす和寧は,目頭に溢れそうな涙を引っかけている。
僕は耐えきれず,その頭を抱き締めた。
受け入れているだけで,納得している訳じゃない。
ここまでの人生も,理解されない上に明かしてはいけない身の上も,これから先の決められた人生も。
僕はリューに会えた。
いつの間にかサポートされて,想って貰えていた。
だけど和寧はそうじゃなかった。
僕も和寧も,渇きのおさまらない孤独を抱えていた。
そしてようやく僕たちはこうして,求め合った結果に出逢うことが出来た。
「なぁ,僕はな,ずっと知りたかってん。僕たちは,S·P……つまりP·Bにとっては,毒なんやろ?」
胸の奥が,軋む。
僕の唇を見つめる和寧の切ない顔を見て,僕はマスク越しに自分の唇に触れた。
どんと響く。
ドクンと高鳴る。
好奇心か,高揚か,不安か。
僕にすら判別のつかない初めての音が,初恋を掠めるような音が。
内側から強く主張していた。
「なら……僕と伊織となら。この毒は……どうなるんやろなぁ?」
唇に振れていた右手を,食事以外では外で決して外すことのない布にかける。
和寧は,まだ自分の頭にある僕の左手首をそっと掴んだ。
見つめあって,僕はとうとう左手を和寧の肩に置いた。



