唇を隠して,それでも君に恋したい。



「持ち方もこう。最初にやっただろ」



あぁ,そうだったかも。

適当に掴むんじゃだめなんだ。

見上げると,直ぐそばに汗の流れるリューの顔。

なんか……文字通り,手取り足取りって感じ。

こんな風に出来るなんて,やっぱりリューは格好いいな。



「なーーリュー?? 何やってんだよーー! はーーやーーくーーー」



見れば,三太がぶんぶんと手を振っている。

そのままラケットを吹っ飛ばしやしないかと,僕は勝手にひや冷やしてしまった。



「リュー,三太が」



ついでにスズも。



「いいから。ほら,一回打ってみろ」

「う,うん」



言われたままに打ってみる。

今度は弱々しくも安定した軌道でスズへと届いた。



「わっ,わっ」



これ,どうしたらいい?!?

僕よりずっと軽やかに,当たり前だけど球が打ち返されて戻ってくる。

よろけながらリューへと視線で助けを求めて,僕は球を追った。