唇を隠して,それでも君に恋したい。



「少しだけなら」



良かったと和寧が笑みをこぼす。

僕は和寧に連れられて,どこかへと移動した。

その間も僕の頭が静かになることはない。

僕たちS·Pは,S·Pと言えど個人情報はきちんと守られている。

個人名まで知れるとしたら,それは僕らを管理する人間のみ。

こんな一高校生男子なんかに,居場所までバレるはずもない。

だけどこれまで和寧の数々の行動を見ていた僕は,和寧が目的とする場所につく前には直感的に確信していた。

僕がS·Pであることを,和寧はきっと転校前から知っていたんだと。



「って。体育館?」

「そ。倉庫にでも入って貰おうかと思って」

「そりゃ壁も厚いし誰も来ないとは思うけど。開かないでしょ,それに部活だって」

「今日はバレー部もバスケ部もバド部もお休みでーす。それに,ほらな?」



開かないと思った分厚い扉。

それは意図も簡単にがらがらと開いた。



「あぁでもまだ大声出さんとってな。体育職員室には2人くらいおるけん。バレたらめんどい。この扉,この前男子が二人突っ込んで鍵壊れとんよ。だから一時的に入れるだけ」



部活のスケジュールにこんなことまで……

よく知ってるなと尊敬を通り越して呆れてくる。



「ほら,入って。そんな身構えんくってもいいんよ,ほんとに,話してみたかっただけなんやから」



がらがらと再び扉が閉じる瞬間。



「同じ,S·Pとして生まれた,2年の男子高校生として」



和寧は僕に聞くより先に,自分の正体を明かした。