唇を隠して,それでも君に恋したい。


写すところを見られるのも印象が悪いから,さらに時間が短くなる。

手を動かさないと。

僕たちの関係は,時間が流れてもあまり変わらなかった。

無事にワーク提出が間に合っても,僕はぐちぐちと和寧に文句を言う。

和寧はそれを,へらへらと,それどころか楽しそうに受け流していた。

本当にいい性格をしている。



「だいたいなんで僕ばっか……」

「伊織?」

「別に。待って……いや待たなくていいから。勝手に次の教室にでもいきなよ」

「何そのこじれたツンデレみたいな……ってどこいくん」



次の授業への移動をしながら,僕がわざわざパタパタと駆けてまで寄る相手は敦くらいしかいない。

僕は和寧の言葉を無視して,その背中へと手を当てた。



「敦,体調悪いの? 寒暖差激しかったからかな,顔色悪い」



横顔が見えて気付いただけだったけど,覗き込むとそれはさらにはっきりと分かる。

隣にいたスズは俺の言葉を聞いて驚くように同じ体勢で敦を覗いた。



「……そんなに悪そうか?」

「うん。休んだ方がいいんじゃない」

「ん……じゃあ次ちょっと抜けるわ。頼んでもいいか?」

「もちろん。ちゃんと仮病じゃないって言っておくよ」



言いながら,僕は勝手に敦の教材を受け取る。

さっさと行け,これは返さないと抱き締めれば,敦はまた1つ頷いた。