唇を隠して,それでも君に恋したい。




「いいな~」

「……?? 和寧?」



女の子達の戸惑いの声が聞こえた。

そっと引き離されたような空気を感じる。



「キスはだめ」



その声の固さに,僕まで肩を揺らしてしまった。

きっと今振り返れば,真剣で射抜くような視線がそこにあるんだろう。



「えっちな事がしたいなら,放課後でも冬休みでもいつでも相手になるからさ」



にこりとした微笑みの音。

僕はうげぇと耳を塞ぐ,その指の間をすり抜けるように,女の子の戸惑いと歓喜する声が届いた。



「う,ぇ。うん!! 約束だからね! 放課後呼びに来るから!!!!!」

「傷,ちゃんと手当てするんだよー」

「えー! すごいじゃん!!」

「やばぁい」




パタパタと去っていく足音。



「でもー。キス拒否られたのはしんどかったぁあ!!!」



そう言うのって,もっと本人から離れて言うもんじゃないのかな。

なんて余計な心配をしてしまう。

僕はちらりと後ろの存在を空気で窺った。

和寧のさっきの言葉はきっと冗談でもなんでもなくて,きっと"今日は"あのこのところへいくつもりなんだろう。

だけど和寧は絶対にキスだけはさせない。

他に強く断られている女の子は沢山見てきた。

どうしてなんだろうと思いつつも,わざわざ聞きたいと思うほど野暮ではない。