唇を隠して,それでも君に恋したい。

「相変わらず」

「なに」

「体力が無いな」



ぜぇはあと走り回りながら,ペアのスズに球を返す僕に。

ノールックで三太へ返すリューが言った。



「うるさい,なっ」



勢いのままラケットを振る。

すると,球は大きく旋回し,隣のコートをさらに跨いだ位置へと飛んでいった。



「あぶなっ」



危うくぶつかる寸前だった三太から悲鳴が聞こえる。



「あーー。ごめん!!」

「しかも下手くそ」

「分かってるよ!」 



これだから運動は嫌いなんだ。



「振り方が違う。ちゃんと相手を見て」



僕の下手さ加減に呆れたのか,リューが自分のラケットを置いて歩み寄ってくる。

リューの動きを目で追い待つと,リューは後ろから僕を抱き締めるように手を回した。