唇を隠して,それでも君に恋したい。


和寧がやってきて早2週間。

いつ雪が降ってもおかしくない,クリスマスが直ぐ目の前だというすごく寒いこの季節に。

僕らの教室はすっかり騒がしい場所となった。

朝から放課後まで,毎日代わる代わる色んな女の子達がやって来ては和寧の名前を呼んでいる。



「和寧~」

「ねぇ聞いてよ。こいつね,今日うちらの前でおもっくそ転んだの。しかも直前に自分で氷張ってるから気を付けろとか言っといて」

「ね! お前がなってめっちゃ笑ったよな!!」

「えもうほんとひどいの。私は心配して言ったのに,転んだ瞬間これ!!!!」



甘えるように首に巻き付くのは,他クラスの女の子。

クラスに響き渡る声での会話は,クラスメート全員の耳を通り抜けた。

和寧は相変わらず軽薄な笑みを浮かべながら話に相づちをうち,女の子達を引き離すどころか受け入れるように腰を引いている。



「ちか。いーのか~? 私は今朝から転んで怪我してご機嫌斜めなんだぞーー? そんなことするなら,チューしちゃうぞ」



首に巻き付いていた女の子が,和寧の膝に乗るようにして上目で和寧を覗いた。

うるさいのはもうなれたから,せめて風紀くらいはどうにかして欲しいと。

僕はその繰り返された光景に目を逸らす。