唇を隠して,それでも君に恋したい。



今,リューが僕に対して普通にしているのと関係があるんだろうか。



「悪いけど伊織,これ以上抜けてたら何言われるか分からねーから。続きはやっぱり放課後にして」

「あ……そだね。戻ろっか」



僕の今までが,当たり前が,頭の中でぐるぐると回っていく。

リューの気遣わしげな視線に気付きながらも僕は,ゆっくりと黙って教室へ戻った。

HRさえ越えれば,後はもう放課後だ。

僕はリューの話の続きが聞きたくて,うずうずを越えてイライラしていた。

そんな僕の態度が気になったのか,担任もいつもより早く話を切り上げる。

起立と礼を終えて,解散の声を聞いた。

僕はそれと共に,皆のもとへ行く。



「ごめん,僕今日反対方向の店に用事あって。個人的なことだから,先に帰っててくれる?」

「おー。珍しいな」

「じゃーなーー」



驚くスズと名にも気にしていない三太の言葉に微笑み返して,僕はリューを見た。

早く抜けてきてね,僕,もう戻れないから。

リューは黙ったまま,短い瞬きで僕へ返す。

出口へと踵を返すと,リューからLINEが入っていた。



『直ぐ戻るから。杉本のばーちゃんちらへんで待ってて』



僕はスタンプで返す。

そっか。

わざわざ態度で示さなくても,ここで言えば良かった。

杉本のばーちゃんち,は,クラスメートの杉本のおばあちゃんの家という意味。

この高校からとても近く,時々杉本がそこから出てきたりするので,仲が良くなくても知られた有名な場所。

すたすたと廊下に出る僕へ,そう言えば何も言って来なかった敦が声をかける。