唇を隠して,それでも君に恋したい。


だからこそ。

ー僕は誰ともキスをすることが出来ない。

しては,いけない。

この特異な体質は名前の通り,誰にとってもpoison(どく)なのだから。

どんなに誰かを愛しても,愛されたいと願っても。

それをしたが最後,そこには最初から,傷つく未来しか用意されていないのだ。

幼いトラウマが甦る。

保育園の頃,自覚せず1人の女の子を惑わせたこと。

大人同士が呼び出され,騒ぎになったこと。

相手の女の子は精神異常の疑いで病院へ向かい,その後何故か僕まで呼ばれ……自分がどんな人間なのかを両親と共に知らされたこと。

幸か不幸か,綺麗好きな上にそれまで僕の唇に1度もキスをしなかった両親は無事で,だけどそのまま僕を国に引き渡したこと。



『うちの娘を……っっ。何なんだお前!!!』



後始末を,僕を引き取った国の施設がお金で解決したこと。

僕のこの身体も,特殊な唾液も。

元は遠い昔,人類が絶滅しそうになったとき。

進化の形として一部の人間だけに備わったものらしい。

血筋に関係するわけでもなく,どう言った基準で発現するのかは分からない。

ただ言えるのは,S·Pは生まれた瞬間からS·Pだということ。

その昔,S·Pの身体は人間の絶滅回避に育児の人手を増やすため母乳が出るようになり,やがて他人を籠落するために媚薬のような成分を唾液に含むようになり……他人を受け入れる側に回れば,僕でも出産まで出来るのだと言う。