唇を隠して,それでも君に恋したい。


「伊織!」



あ,と振り返る。

そこには転向してから一度も連絡一つとっていない和寧がいた。

つかつかと近寄り,ざっとその目の前で立ち止まる。

そしてジロッっと見つめると何かを察したのか,上げた右手をたらりとした汗とともに下ろした。



「あー卒業おめでとう? ひさしーぶり……」



たく,来ないつもりかと思って不安になったじゃないか。

僕は君に,自分の人生を預ける覚悟で進路まで決めたというのに。

連絡一つよこさないって,どういう了見なわけ?



「あ,おい伊織まっっ」



僕はそんな怒りを込めて



「いっっって!!!?」



力を入れた中指で,彼の額を思いきり弾いたのであった。

小さく口の端を上げると,隣でヒメも,事情を分からないなりにくすくすと笑った。