唇を隠して,それでも君に恋したい。



「ごめんね,リュー。たまたま入っていくのが見えたけん,つい。僕も話していいかな。いい加減腸が煮えくり返りそうなんよ」

「別に」



和寧が僕を見た。

悲しみと怒りともどかしさを乗せた,リューの何倍も強く光る僕を射抜くような目。

プレッシャーに,息が詰まる。

僕はそっと,胸元で拳を握った。

そして,そんなつもりも無いのに,無意識にキッと睨みつけるように上目で対応する。

和寧はそれでも,僕から目をそらさなかった。



「ほんとにこれでいいの」

「良くないはずないだろ」

「あの子が君に本気でも?」



僕は大きく息を吸って,小さく吐いて,真っすぐに見返した。

それについて,答えは出ている。



「僕は誰とも恋しない。引き際はちゃんと見極めるよ」



君も,同じだったんだろ。

それについて,たとえどんなに後悔していたとしても僕を責める権利なんてない。



「敦の事は?」

「敦は僕のために不幸の表面を知った。もう戻れない。だから今度は,また僕の我儘のために,一番幸せの近道になる方行ってもらう。そこに僕がいないのは当然だ」

「それは違っ……」



割って入るように,リューが声を上げる。

けれど,流すまいとまんまるな瞳に溜まる僕の水に気がついて,ショックを受けたように言葉を止めた。



「僕はもう,決めたんだ。ほっといてくれ」



2人には悪いと思ってる。

僕なんかのために沢山寄り添ってくれて,今もこんなに心配してくれる。

そんな2人を僕は突き放す。

どうしてこんなやり方しかできないんだろう。

僕は瞳をこっそりと拭って,また2人をみた。

いずれにせよ,僕の意思は固い。