「伊織」
「リュー……」
僕の表情がぴしりと迷子になる。
ヒメはすぐに察して,僕の袖を掴んだ。
「話そう」
僕は顔を伏せて,諦めるように眉を寄せる。
ヒメはそんな僕を心配するように呼んだ。
「伊織……」
「いや,うん……いい。リュー……分かった」
結局,僕の小さな抵抗はツナギでしかない。
いつかくる,こういう場面への,先延ばしでしかない。
移動しながら,僕はリューの話を聞くのか怖かった。
彼はきっと,僕の全部を否定するだろう。
真っ直ぐで,とてもいいやつだから。
今はその正しさが怖い。
「伊織は間違ってる」
人気のない教室に着いてすぐ。
前置きなくぴしゃりと言われ,全身の血流が凍りついた。
何か言わなくちゃと思いながらも,僕は冷たく強張った表情で,唇に少し力を加えることしかできない。
「リュー,そんな言い方じゃ伊織も納得しない」
カララと第三者が入室してくる。
その人物に僕は驚いて目を丸くした。
「和寧……いつから」
そんな僕の言葉が聞こえているのかいないのか,和寧は僕を無視するようにリューを見る。
彼も,僕に怒っているのかもしれない。
当然だ。



