唇を隠して,それでも君に恋したい。




「イケメンすぎない?」



やるにしても普通は逆だろうと笑う。

でも




「やりすぎ」



軽く窘めるように告げるも



「ふふん~」



ちっとも反省していない様子に,僕はまた苦笑を零した。

さらさらふわふわしたヒメの髪の毛が僕の顔にかかる。

僕はヒメの身体を抱きしめて,目を閉じた。

噂は尾ひれをつけては,僕の想定の何倍も速く回ったようで。

約束のお昼は少し居心地が悪かったくらいだ。

けれども,そんなものも数日すればすぐ慣れた。

もともとヒメは好かれやすく目立つから,僕らの日常はあまり大差ない。

ヒメがいつも笑顔でいてくれるから,僕は何も考えずにいられる。

ただ相槌を打って,微笑んで,たまに僕からも話題をふって。

そんな日常が当たり前になって。

誰も,僕らの間には入れなくて。



「伊織! 3位だった! ありがとう~! 伊織は1位? そりゃ5位を3位にするくらいだから,当然だよね」



なぜか僕の分まで嬉しそう。

中間テストの成績が返却され,僕は約束通りのものをヒメに与えられてほっとする。

ヒメが僕の分を喜んで,僕がヒメの分をめでたいと思う。

その空間の空気が嬉しくて,僕はほんわりと微笑んだ。