唇を隠して,それでも君に恋したい。



「おいだれか聞けよ」

「伊織? ヒメぇ?! 百合川さん,あんなに名前で呼ばれるの嫌がってたのに」

「おいおいおい,百合川さんが風邪ひいたのって」



ヒメも気が付いたようで,きょとんと周りを見る。

お互い気づかないでいるなんて,これじゃあほんとにバカップルみたいじゃないかと僕は苦笑した。


「?」


ふと,ヒメは首をかしげて何かを考えると,僕にだけ見せる悪い顔でにひるに笑った。



「やっぱり,ユリユリが風邪ひいたの伊織のせいかも」



いたずらな声に首をかしげると,僕を固定したヒメが子供のようにじゃれついて,周りに見えないように首筋に唇を寄せる。

少しかわいい音を残して離れていくと,そこにはうっすらと赤い花が咲いた。

僕はびっくりと目を丸くするしかない。

その光景にざわめきが大きくなる。



「またお家に呼んでね」

「「「う,うわぁぁぁぁあ」」」



男どもを中心に,耳をふさいでかけていく。

してやったりな顔をしているヒメの頭を引き寄せて,僕は優しくぽんぽんと撫でた。