百合川さんはきゅっと目を閉じて,震えるように頷いた。
僕は彼女に同じ気持ちを返せない。
だけど百合川さんは自分の言葉通り,毎日僕を守ってくれている。
いつの間にか一日中百合川さんを見ている気がするし,そのせいでまたいつかの噂が再燃した。
だけどそれを理由に迫ってくることもなく,話題にすることすらしない。
僕から何か返せるものがあるとすれば,それはほんの少しの有用性や,優しさくらいのものだろう。
百合川さんは本当にこれからも僕のために時間を使ってくれるだろうと分かる。
申し訳ないと思いながらも,返せるものが圧倒的に足りていないと分かっていながらも,僕には百合川さんが必要だった。
僕らはその日,連絡先を交換した。
百合川 姫。
目でなぞり,頭で反芻する。
姫と呼ばないでという百合川さんを思い出し,僕はもう一度目でなぞると,電源をオフにした。



