唇を隠して,それでも君に恋したい。



ごめんね,敦。

ここまで来ても言えないことばかり。

僕のことならば何でも話そうと腹をくくってはいるけれど,2人の事は別。

これは性別とか,性癖とか……そういうプライベートな話だ。

許可も貰っていないうちに,勝手に話してしまうなど出来るはずもない。

許可を取っておくべきだったかと考えているうちに敦はもう次の一言を決めていた。



「それを聞いたら,俺が伊織を拒否すると?離れていくと思って……?」



僕は,その言葉に息を止めた。

敦のその瞳は,さながら迷子の子供のようで。

だからこそ,敦はもう分かってるんだ。



「違う」



敦が僕を置いていくんじゃない。



「離れたいのは,僕の方だ」



敦がグッと奥歯を噛むのが分かった。

わがままだと自覚している僕は,何も言うことができない。



「頂上だな」



ふと敦がそんな事を言う。

この観覧車は20分で回り切ると,そう書いてあった。

あと10分か,とぼんやり考えて,僕はまさかと目を見張る。

S・Pの強烈な効果は10分以内にふっと消えると,そんな話をしてしまった。

肩に手を置かれ,膨らみのある唇が迫ってくる。

僕ははっとして,それを両手で拒んだ。



「待て敦,待って! 本気で言ってるのか?」



羞恥と困惑と,僕を思う喜びで泣きそうだ。

僕は正直構わない。

今この密室で敦に襲われ,例えぐちゃぐちゃにされてそれを誰かに目撃されても。

僕はひとつも構わない。

僕はもう,死んだってかまわないんだ。

でも敦はそうじゃない。

体裁も将来もある。

そんな危ないこと