唇を隠して,それでも君に恋したい。


扉が閉まる。

観覧車のゴンドラは,乗り込むまでも動き続けていて驚いた。

無言が流れる中,次のゴンドラに乗り込むほかの客を眺めながら,僕はようやく口を開いた。



「敦,君に話がある。僕らの今後に関わる重要な話だ。いつか話すと約束した」



ちらりと視線を向ける。

敦は何かを悟ったような顔をして,静かにうなずいた。

そうだ,君が感じている通り,これは。

僕らが別れる話だ。

ハッピーエンドなんて最初から存在しない,ラブストーリーの終わりを僕から今告げるだけの話だ。

ゆらゆらと揺れるゴンドラに頭を預けて,どくどくと全身をめぐる音をかき消すように目を閉じる。

そして,世界が無音になったように感じた時。

僕はゆっくりと話し始めた。

今まで僕に起こったこと。

僕が何者であるのか。

敦は困惑していた。

だけど,僕が至って真剣だと悟ると,さらに瞳を困惑に染めた。

そして,僕のマスクに目をとめる。

僕は苦笑して,外してみせた。

S・ Pを抜きにしても,こんなに口元を注視されたことはなく,若干の抵抗があったけれど。

僕はそれでも構わないと思った。



「和寧はそれを知って……?」



そうだ,それもあった。



「そうだよ。ちょっと,事情があって」



その事情が知りたいと知りながら,口にして。

敦はぎゅっと眉を顰め,今度は首を傾げた。



「でも,そういえばリューと」

「それも,事情があって」