「お兄ちゃん。ついに、私高校1年生になったよ。

信じられる?あのときのお兄ちゃんと同い年なんだって。

あんなに大人に見えてたのに。高校1年生なんてまだまだ子供なんだね。」


近くに誰もいないことを良いことに、声に出して、お喋りする。

これは毎年の私のクセだった。


丘にお尻を付けて座り、空を見上げる。

良く晴れた青い空、今日もたくさんの星が綺麗に見えそうだった。


「私ね、お兄ちゃんみたいな男の子に出会ったよ。それで思い出した。

私、本当はわがままで自由で目いっぱい好きな事をやる女の子だったよね。」


折り紙をしたい、ボールで遊びたい、花火をしたい。

色んなやりたいことを次々と伝えて、二人の都合なんてお構いなしに誘っては、いつも一緒に遊んでもらってたころを思い出す。


「私、自分らしく生きるよ。頑張りたいこともできたの。

看護師になるために、今からたくさん勉強して頑張るから。

お兄ちゃんにまた会う日、自慢できる私で居るからね。」


どれだけ話しても返答のない、綺麗に手入れされた墓石を見つめる。


お兄ちゃんとお姉ちゃんの存在が大きい事は、今でも、きっとこれからも変わらない。

だけど、ふたりだけを追い求めることは卒業しようと思う。


「だからお兄ちゃんは、私のことは心配しないで待っててね。

……お姉ちゃんのこと、見守ってあげてね」


今はもう、どこで何をしているのかも分からないお姉ちゃん。


私達3人を良く知っている看護師さんのはるちゃんからは、入院生活の記憶が綺麗に抜け落ちてるだけで、たくさんの友達と温かい家族に囲まれて、元気に退院して行ったのだと聞いている。

だからきっと、どこかで幸せに暮らしているはずだけど。

やっぱり、お兄ちゃんとお姉ちゃんが離れ離れなのは悲しいから。