鼻で笑いながらそう言った彼の声が、私の耳にまとわりつく。




『一年のときからずっと好きでした。付き合ってください』


一ヶ月前、高校生になってはじめて告白されてお付き合いをすることになった橋本くん。




高校二年生に進級して同じクラスになって、少し気になっていた彼から思いを告げられたときは本当に嬉しかった。


クラスの中でもみんなの人気者で、誰にでも優しく接してくれる彼に『好きだ』と言われてドキドキしたあのときのことを、私は今でも鮮明に覚えている。





だけど、放課後。


忘れ物を取りに教室へ戻ろうとしたとき、予想もしていなかった彼の会話を聞いて、その場から動けなくなってしまった。




「(橋本くん、なんで……っ?)」


「え、何?じゃあ別れんの?」


「迷ってんだよ。顔はタイプだし、メンヘラとかじゃないから扱いやすいっていうか?」


「普通に可愛いよな?レベルで言えば……中の上くらい?」


「まぁそんなところだろうな。でも子供っぽいっていうか、付き合うって意味知ってる?って感じだしなぁ」


「別れるなら俺に譲ってくれ!」



なんて、下品な会話なんだろう。


教室の入口の前で、涙が止まらなくなった。