「こんにちは、七瀬“さん”」
「……っこ、こんにち、は」
ただでさえ緊張している上に、いつもとは違う呼び方をされて、わたしは盛大に噛んでしまった。
仁科さんはそんなわたしにふっと口元をほころばせ、わたしの向かいの席に座った。
そして、「七瀬様」と小さくわたしの名前を呼んで耳を貸すよう手招きした。
わたしは何だろうと思いながら体を仁科さんの方に傾けた。
「ここでは、他のお客様に疑念を抱かせぬよう瀬様のことを七瀬さんと呼ばせていただきます。非礼をお許しください」
耳元で電話の時と同じ重低音が響く。
わたしはびっくりして、「非礼だなんて恐縮です……っ」と小さく言った。
「それでは、本題に移りましょう」
それから、わたしは仁科さんの協力のもと麗仁くんの誕生日のサプライズに関することは筆談で、その他のやりとりは口頭で進めた。



