それは別に良いのだけど、問題は他にあった。
昼間のこの時間帯、この喫茶店内は昼の人間で賑わっている。
しかし、仁科さんは夜の人間の人だ。自分から頼んだ手前、今日の約束を断るわけにもいかずここに来てしまったけれど、本当に大丈夫なのだろうか。
仁科さんが夜の人間だって、周りのお客さんにばれちゃったりしないかな……。
さっきからそんなことばかり考えて、また冷や汗が流れた。
カランカラン───
そうしていると、店内に入店を知らせる鐘の音が鳴り響く。
わたしはふと入り口の方に視線を投げた。
「……!」
するとそこには、上質な黒地のスーツに身を包んで店員さんに会釈する仁科さんの姿があった。
仁科さんは店内を素早く見渡すと、わたしを見つけたのかその切れ長の目がすっとわたしを捉えた。
ゆっくりとこちらに近づいてくる。
周りのお客さんは仁科さんのことをちらちらと見て、連れの人と何やらキャーキャーと騒いでいる。
仁科さんも、麗仁くんに負けず劣らないほどの美徳秀麗なお顔の持ち主だと、わたしは思う。
飛鳥馬様の隣に並んでも引けを取らないほど美しい夜の人物が、こんなところにいて本当に大丈夫なのだろうか。



