「ふんっ!!認めないもんっ!りとくんに読めるものは、わたしにだって読めるの!」
そう言ってプイッと顔を背けておれに背を向け、風のように皇神居のほうへ行ってしまった。
その後ろ姿が消えると、先ほどまで満たされていたはずの心の中に空洞が生まれる。
さびしい、と。
そう思った。
彩夏の姿が見えなくなると、急に不安を感じてしまう。しかもそれは日を追うごとにどんどん深刻なものへ変わっている気がして、自分の心のなかに潜む重く暗く醜い正体不明の漆黒の感情に、突き動かされるようにしてはっと正気に戻る。
そんなことが、最近毎日のように繰り返される。
おれは、どこかおかしいのか……?
彩夏をみていると時々どうしようもない衝動に駆られるのだ。それは、好きだの愛しいだのそんな甘っちょろいものじゃない。
もっと深く、重く、不明瞭な感情。
あの子を誰にも見せたくない、誰にも渡したくない、ずっとおれの隣で笑っていてほしい。
そして───
もし、おれと彩夏を引き裂くような人物が現れたとしたら、おれは迷いなくそいつを殺してやると、そんな恐ろしい感情に囚われる。



