「もう、そんなに怒らないでください。もうしませんから」
そんな彩夏のセリフを聞いたのは今日で何度目だろう。こうして彩夏と過ごすようになって、おれはからかわれてばかりいる。
なんだかおればかりが余裕がなく、格好もつけられないまま彼女の手のひらの上で転がされているようだ。
それがたまらなく屈辱的で、そしてなぜかたまらなくくすぐったい心地がした。
「読書してたんだよ」
「えー!すごいすごい、何の本を読んでたんですか」
「……これ、たぶん彩夏にはわからないよ」
近寄ってくる彩夏にまた顔を赤くしながらおれは目を逸らして本を差し出す。彩夏はきらきらとした目で本のページをめくっている。
けれど、だんだんと彩夏の頬がぷくーっと大きく膨らんでいく。気のせいかもしれないが、膨らむにつれて赤みも帯びた顔をこちらに向け、おれは思わずプッと噴き出した。
「あーっ!!笑った!!!」
おそらく彩夏は本に書いてある内容が1ミリたりとも分からなかったのだろう、プライドの高い彼女のことだから今は悲しくて悔しい気持ちと、それ以上におれに馬鹿にされたという事実にカンカンに怒っている。
「っふ、あははははっ!!だって、彩夏がそんな顔するから。わからないならわからないって素直に認めろよ」



