麗仁くんが言わんとしていることは、なぜだかすぐに理解できた。
麗仁くんはきっと、今の東ノ街が朝と夜の世界に分断していることや、住民を権威で支配していることを何とかしたいと思っているのだろう。
「……だけどこれは、おれだけの問題じゃないんだ。長年積み重なった慣習は簡単には変えられない」
昏い目をしてそう呟く麗仁くんを、わたしはただ見つめることしかできなかった。
上手い返事なんて何一つ思いつかない。
……だってわたしは。
わたしは、今目の前にいるこの人のことを、まだ全然知らないからだ。
麗仁くんと出会って、まだ一年も経っていない。あの夏の夜、公園で麗仁くんとお互いの感情を確かめ合って、付き合い始めて三か月が過ぎた。
季節はもう秋を超え、冬を迎えようとしている。
───ぁあ、知りたいな。
麗仁くんのことを、知りたい。
麗仁くんがこれまでどんな人生を歩んできたのか。幼い頃の麗仁くんはどんな子だったのだろう。
私はどうして、幼少期に麗仁くんと過ごした日々を忘れてしまっているのだろう。たまに脳裏に蘇る幼い彼の横顔だけでは、麗仁くんのことを何も知り得ない。
…………そして、いつから、この街を統べる皇帝としての地位に立たされたのか。
きっと麗仁くんはわたしが思っているよりもずっとずっと苦しんで、藻掻いて、自分の皇帝としての役割を全うしている。
そんな麗仁くんを、わたしが否定しちゃダメだった。



