冷酷総長は、今日も変わらず彼女を溺愛する。【After Story】



「へぇ〜、君は迷い猫ちゃんなんだね。大丈夫、そんなに怖がらなくても何もしないよ。俺が優しくしてあげるか───…グホォッ」



その瞬間、男が台詞を言い終わらないうちに目前から消えた。拳が腹に打撃を与えた鈍い音が間近で聞こえて、わたしはギュッと目を瞑った。


てっきり仲間内での闘争が始まったと思ったわたしは、身を最大に縮こまらせて震えていた。


下手したら自分も殴られるかもしれない。



だけどそんな恐怖が体に与えられることはなかった。


代わりに、頭上で声がした。
よく知った冷たい声が容赦ない言葉を紡ぐ。



「ねえ、お前さ、人のものには手を出しちゃいけないって習わなかった?」



カラカラと鈴を転がすような声音には、明らかに計り知れない怒りと憎しみが滲んでいる。


「……っ、あ、あす……っ」


自分を殴ってきた相手の正体に気づいた男が、哀れなくらい顔を真っ青にして後退する。


硬いアスファルトに服の擦れる音が聞こえる中、その音に重なるようにコツン、コツンと革靴が地面を蹴る音が鳴る。


そして男はいとも簡単に追い詰められ、その顎を乱暴に捕まれ上を向かされた。


「うぐっ……」

「苦しそうな顔。おれの大切な娘を汚そうとしたお前には、もっともっと痛くて苦しい制裁を与えないとね」


そう言って、拳を振り下ろした──。