わたしは恐る恐る辺りを見回しながら暗闇の中歩を進めていた。
麗仁くんのいる皇神居までは結構な距離がある。とてもじゃないけど、徒歩では辿り着けない場所だ。
それなのにそこを目指そうとするわたしは、少し頭がおかしくなったのかもしれない。
あまりにビクビクしていたら不審に思われるから、夜の住人のように努めて平静に、飄々とした顔で闊歩する。
目の前からいかにも危険そうな男の集団が迫ってくる。
わたしは自然と息を潜めて視線を下に落とした。
「なあ、お前あのウワサ聞いたか?」
「あ?」
「──って女が、───……」
「まじで? どうせ遊びだろ。飛鳥馬サマぐらいになるとそこらの美女にだってなびかないだろーし」
話の内容が聞こえるくらいに狭まる距離。速くなる鼓動。
すれ違う瞬間、わたしは足を前に踏み出すことができなかった。男たちが通り過ぎていくのがスローモーションで視界に入る。
一瞬のことだったはずなのに、緊迫した気持ちのせいで永遠に感じられた。男たちの声がだんだんと遠ざかっていく。
わたしはそこでようやく呼吸を取り戻した。
「……っはあ〜〜〜」
一気に体の力が抜けていく。なんとか足に力を入れて、歩道の脇で立ち尽くす。



